相続法が改正され、遺産分割に関しても見直しが行われました。
遺産の内容となっている預金を遺産分割前に払い戻せる仮払い制度が創設されたり、配偶者保護が強化されたりしています。
今回は遺産分割についてどのような見直しがあったのか解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1.預金の仮払い制度
従来、遺産に預金が含まれている場合には遺産分割が成立するまで出金や振り込みなどが一切できなくなっていました。しかしこれでは必要な葬儀費用の支出などもできず、相続人が困ってしまいます。
そこで今回の法改正により、遺産分割前に預金を一部払い戻せる制度が新設されました。
これを預金の仮払い制度といいます。
払い戻せる金額は1つの金融機関について、以下のうち高い方を限度とされます。
- 法定相続分の3分の1
- 150万円
2.配偶者への特別受益持ち戻し免除意思の推定
次に遺産分割における配偶者保護も強化されました。「特別受益持戻免除意思の推定」規定がもうけられたので、内容をみていきましょう。
特別受益持戻免除とは
新法では、被相続人が配偶者へ居住用の家を贈与した場合や遺贈した場合、特別受益の持戻免除意思が推定されるようになりました。特別受益持戻免除とは、「特別受益による持戻計算をしなくてよい」という意思表示です。
通常、財産の贈与や遺贈を受けた相続人がいたら「特別受益者」として遺産分割時に受け取れる遺産を減らされます。これを「特別受益による持戻計算」といいます。
ただし被相続人により特別受益の持ち戻し免除が行われたら、特別受益による持戻計算が行われず、受益者であっても法定相続分とおりに遺産を受け取れます。
旧来の相続法では、配偶者に住居を贈与・遺贈した場合、被相続人が「特別受益の持ち戻し免除」をしなければ、配偶者の遺産取得分が減らされていました。しかしこれでは配偶者の生活が守られない可能性があります。そこで新法では被相続人が何もしなくても「特別受益の持戻計算を免除する」という意思を推定する扱いに変更されました。
これにより、家の贈与や遺贈を受けた配偶者であっても別途法定相続分まで遺産を受け取れるので、老後の生活が守られやすくなります。
ただし持ち戻し免除意思が推定されるのは「婚姻期間が20年以上の夫婦」のみです。また持ち戻し免除意思は推定されるだけなので、別途被相続人が「特別受益の持戻計算を免除しない」と意思表示をすれば、持戻計算をさせることが可能です。
新法では配偶者居住権や配偶者短期居住権の規定ももうけられ、全体的に配偶者保護が強化されているといえるでしょう。相続手続きに迷われたときにはコンフォルトの弁護士までお気軽にご相談ください。