2019年から2020年にかけて、段階的に相続に関連する改正法が施行されました。
今回は相続法改正でどのような点が変わったのか、重要ポイントを弁護士が解説します。
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1.配偶者居住権
改正民法では、被相続人の配偶者の保護が強められました。遺産分割時に配偶者居住権を取得すれば、配偶者は定められた期間、住み慣れた家に居住し続けられます。
また相続開始後一定期間は配偶者短期居住権が認められるので、遺産分割成立前に急に家を追い出されずに済むようになりました。
2.預貯金の払い戻し制度
改正民法においては、遺産分割前に一定金額まで預貯金を払い戻せる制度が新設されました。
法定相続分の3分の1または150万円の少ない方の金額まで引き出せます。
これにより、葬儀費用を払いやすくなったり、当面の生活費に充てたりすることが期待されています。
3.自筆証書遺言の要件緩和
自筆証書遺言の要件も緩和されました。
これまでは遺産目録についても全文自筆で書く必要がありましたが、目録部分についてはパソコンなどによる作成が認められるように変更されています。
4.自筆証書遺言の法務局における保管制度新設
自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が新設されました。法務局に預けた自筆証書遺言は検認が不要なので、相続人にかかる負担も軽減できます。
5.遺留分侵害額請求
遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求に変わりました。これまでは遺産そのものを取り戻す必要がありましたが、これからは金銭的な清算が原則となります。
6.特別受益の持ち戻し免除の意思推定
婚姻期間が20年以上の配偶者間で自宅の贈与や遺贈があった場合、「特別受益の持戻免除意思」が推定されます。遺言書などに「特別受益の持ち戻し免除をする」と書かれていなくても、配偶者の遺産相続分を減らされることはなくなります。
7.特別寄与料
これまでは、相続人以外の孫や長男の嫁などがどんなに献身的に介護しても、寄与分は認められませんでした。
法改正により、相続人以外であっても一定範囲の親族が被相続人を献身的に介護した場合などには、特別寄与料というお金を請求できるように変更されています。
8.遺言執行者の権限強化
改正法では遺言執行者の権限が明確化され、強化されています。
今後は遺言書に遺言執行者を定めるメリットがますます大きくなったといえるでしょう。
9.相続登記の対抗要件
不動産を相続したとき、これまでは相続登記をしなくても第三者へ権利を主張できると理解されていました。今後は相続登記しないと第三者へ権利主張できず、所有権を奪われてしまう可能性があります。
これから遺言書を作成したり相続手続きを進めたりするなら、改正法に応じた対応が必須といえるでしょう。栃木県宇都宮市周辺で相続手続きに関心のある方がおられましたら、まずは一度、弁護士までご相談ください。